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動物から神谷の農地を守ろう!PJ ① 「はじめに」

更新日:2021年8月31日





 初めて神谷地域を訪れたのは、2019年。大学4年生のときでした。グーグルマップに惑わされながら、細くて見通しの悪い道を上がっていくと急に視界が開け、棚田が眼前に現れました。稲穂が風に揺られている様子は、大学4年間でたくさんの中山間地域に訪れた私にとっても、思わず息を飲んでしまう美しい光景でした。



 それから1年後、この地で自分が「鳥獣被害対策」の活動に関わるようになるとは、その時はまだ予想もしていませんでした。プロジェクトがひと段落した今、振り返ると、本当にたくさんのことがあったなと思います。




 神谷地域では、深刻な鳥獣被害が発生していました。果樹や水稲などが野生動物によって深刻な被害を受けており、中には鳥獣被害が理由で耕作をやめる人もいました。



 以前、タテマエが生活環境リサーチという地域住民への聞き取りを行ったのですが、何人かの人が鳥獣被害を課題に挙げ、鳥獣被害に困らされている人がいることが分かりました。



 また2020年7月には、タテマエの事務局である伊藤さんが、集落協定に所属している農家23名を対象にアンケートを実施しました。その中で「農業上困っていることは何か」との問いに対し、23名中22名が「鳥獣被害」に困っていると回答しました。

 これは、「労働力不足」や「農地への道が狭い・急峻」などの他項目を抑えてダントツでトップであり、鳥獣被害が農業を続ける上で深刻な課題になっていることが伺えました。



 そういった状況もあり、2020年の秋から鳥獣被害対策を減らすためを神谷地区(注1)で取り組みを開始したのです。





 今回から5回に渡って、2020年-2021年に実施した「動物から神谷地区の農地を守ろう」プロジェクトについて書いていきたいと思います。中山間地域において野生動物による農作物被害は深刻で、その問題には、単に野生動物だけでなく、日本人の生活環境の変化や、共同社会の構造が深く関わっています。少し長いですが、お付き合い頂ければ幸いです。


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よこ / 23歳 岡山県出身。現在は兵庫県の大学院で鳥獣被害対策について学ぶ。

ボードゲームと山登りが好き。高知県は第2の故郷。

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↑神谷地区の棚田。コンバイン等の大型機械を入れるのは難しいため、作業は主に人の手に  

 よって行われる。生産性は低いが、中山間地域は寒暖差が大きいため、美味しいお米がで 

 きると言われている。


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はじめに

 2016年。高知大学に入学した私は、まだこれといって自分がやりたいことがありませんでした。子どもの時から生き物が好きだったこともあり、大学では生態学や動物行動学を先行しようかとぼんやりとは考えていました。とはいっても、まだ自分が本気で打ち込めるテーマは見つからずにいました。


 大学1年生の夏休み、とある実習に参加しました。それは四国の中山間地域をフィールドとして数週間滞在し、その地域の課題に触れるというものでした。私のフィールドは愛媛県にある四方を山に囲まれた中山間地域になりました。期間中は地区の方に聞き取りをしたり、農作業体験を行ったりしました。



 聞き取りをする中で、多くの人が困っている課題が「イノシシによる農作物被害」であることが分かりました。その地区では稲を始めとした多くの作物がイノシシに食べられ、多くの被害を被っていました。今まで「鳥獣被害」というのは、名前は知っているけれども、自分に馴染みのない、どこか遠い話というものでした。

 

 ですがその実習で、鳥獣被害は中山間地域の深刻な課題であることを認識し、そのことが私の中にある考えを芽生えさせる導因となりました。それは、まだやりたいことが明確ではなかった私にとって、最も必要としていたものでした。


 すなわち、「鳥獣被害の解決、それを大学4年間のテーマに」というものです。




↑大学1年生の時に参加した実習。疲れすぎて爆睡。とてもしんどかった記憶がある。

 この実習から中山間地域、鳥獣被害対策に興味を持ち始めた。



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 それから4年後の2020年。私は鳥獣被害対策の研究を行うため兵庫の大学院に進学しました。そしてその夏。いくつかの偶然が重なり、地域研究ユニットタテマエに加入することになりました。タテマエは「いの町神谷地域」で活動を行っているのですが、関わっている地区の一つが、以前私が訪れた成山地区であると知り、少し感慨深い気持ちになりました。



 タテマエは、私が加入する前年度に「アクションプラン」というものを作成していました。これは、タテマエの学生が地域の人に聞き取りした結果を踏まえ、今後15年間で神谷地域が良い地域になるように、13項目からなる活動計画を記したものです。その中の1項目が「動物から小さな農を守ろう!」であり、まさしく鳥獣被害対策に関係しているものでした。僕自身、鳥獣被害対策について学んでいたものの、実際の現場での被害対策に関わったことはなく、地域でそういった活動に関われるのはとても魅了的に思えました。

 

 そういう経緯があり、タテマエの一員として、神谷地域で鳥獣被害対策のプロジェクトを立ち上げることになったのです。



 さて、大分前置きが長くなってしまいました。次から活動の内容について書いていこうと思います。





↑聞き取りを通じて作成したアクションプラン。全部で13の目標から成っている。

 「7.動物から小さな農を守ろう!」(右上)も、そのうちの一つ。


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*注釈


(1)神谷北部地域は5地区から成り立っていますが、鳥獣被害対策は、その中の3地区を対 

   象に行われました。5地区のうち、他の2地区は地理的に離れた場所にあり、地理的要

   素が重要になる鳥獣被害対策プロジェクトを、5地区合同で行うのは難しいと考えた

   からです。

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