動物から神谷の農地を守ろう!PJ ➃「計画づくり」
- タテマエ_広報
- 2021年8月31日
- 読了時間: 5分

↑鳥獣被害対策 3ヵ年計画。「SDGz」の鳥獣被害対策バージョンということで、
「WDGz」と名付けました。詳しくは以下で説明します。
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見えてきた課題
合計3回の聞き取りを終え、得たデータを分析しました。
神谷地域で必要な対策は何なのか。それを実行する上での課題は何なのか。
私なりに、以下の3つの課題を導き出しました。
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①設置している柵に不備があり、被害に遭っていること
②捕獲の負担が大きく、今の捕獲体制を継続することが難しいこと
③サルの被害が増えているが、まだサル対策に取り組んでいる人が少ない
こと
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1つずつ、説明します。
①設置している柵に不備があり、被害に遭っていること
被害が出ている農地の多くは、柵を張っていない、もしくは柵を張ってはいるがネットなど脆弱性のある柵であることが多いです。
例えば、以下の地図は、実際に神谷地域を歩いて柵の状況をマッピングしたものです。
水色の線はネット柵を表しています。ネット柵で囲っている農地が何ヵ所があり、これらはいずれ被害が出る可能性が高いと言えます。

↑獣害対策マップ。現地調査と聞き取りによって作成した。
各線は、柵の位置を表している。オレンジは電気柵、水色はネット柵、茶色はトタン柵、
黒色はワイヤーメッシュ柵。
また、前回の記事で述べたように、電気柵やワイヤーメッシュ柵など比較的効果の高い柵であっても、維持管理をしっかり行わないと被害に遭ってしまいます。既に効果がなくなっている柵もある可能性があり、そのための処置も行う必要があるでしょう。
②捕獲の負担が大きく、今の捕獲体制を継続することが難しいこと
前回の記事で書いたように、捕獲には非常に労力が掛かります。確かに神谷では、地域住民が協力して捕獲を行っているため、その分負担を減らすことができています。
しかし、それでも負担は重くのしかかっています。共同で捕獲を行っているIさんとTさんは、「捕獲をするのは良いが、その後の処理が大変。すごく時間を取られる」「できたら、行政なんかで、捕獲したあとに、処理を代行してくれる人を構えてほしい」といいます。
また、この地域の狩猟者のほとんどは60~70代なので、今後ずっと捕獲を行えるわけではないでしょう、
現在の捕獲後の処理負担を軽減し、また今後捕獲を継続するためには、どうしても捕獲に携わる人を増やすことが不可欠です。
③サルの被害が増えているが、まだサル対策に取り組んでいる人が少ない
こと
神谷地域では昔からイノシシの被害が多かったこともあり、イノシシ対策は比較的行われていますが、サルの出没は近年になって出始めたこともあり、その対策はほとんど行われていません。
「柵を張っているなら良いのではないか」と思われる人もいるかも知れせんが、柵はイノシシに対しては効果的ですが、サルは普通の柵では登られてしまうため、効果は期待できないのです。
今のところサルによる被害額はまだ少量ですが、今後被害が一気に拡大する可能性も否定できません。手遅れにならないうちに、早めに手を打つことが求められます。
計画づくり
以上のような課題を踏まえ、鳥獣被害を減らすために、今後3年間かけて取り組むべき内容をまとめまることにしました。それが「鳥獣被害対策 3ヵ年計画」です。
計画の作成に当たって心掛けたことは、計画内容は、タテマエが作成するのではなくて、地域の人自身が作成するということです。
計画の作成のため、2021年5月に会を開き、そこで意見を出してもらいました。会には地域住民10人が参加してくれました。
3回の聞き取りで明らかになった課題と、今回の会で出た意見を基に、鳥獣被害対策3ヵ年計画を作りました。それが「WDGz」です。

皆さんお分かりかと思いますが、いま流行り(?)のSDGzをモデルにしています。持続可能な開発目標という意味のSDGzに対し、こちらは「小野・成山版 鳥獣被害に打ち勝つ目標」という意味です。5つのゴールと14のゴールによって成り立っています。
内容は、以下のようになっています。
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WDGz - 5ゴール,14ターゲット
1、みんなで対策の話をしよう
・農家で集まって被害の現状や効果的な対策について話し合う
・家庭菜園の人も含めて集落ぐるみの対策について話し合う
2、捕獲を続ける体制を作ろう
・くくり罠講習会を開催して技術を学ぶ
・狩猟免許を持っている人を増やす
・狩猟免許を取得した人に、狩猟の技術を伝える
・みんなで協力して、捕獲・処理を行える体制をつくる
3、柵を張って農地を守ろう
・集落協定で電気柵を購入し、必要な人が使えるようにする
・電気柵の設置勉強会で正しく設置を学ぶ
・自分が設置している柵に不備がないか点検する
4、サルの出没に備えよう
・サル対策に成功している集落の視察に行く
・集落ぐるみのサル対策について勉強会を行う
・サルの追い払いををするための準備をする
5、パートナーシップで目標を達成しよう
・地域の人同士で協力して、対策を進めよう
・専門家や学生など地域外の人の応援も借りて、対策を進めよう
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計画の内容は色々な工夫をしました。まず、実現可能な目標にすること。そして、達成できたかどうかが明確に分かる目標にすることです。
計画自体は2021年7月におおむね完成しました。本来は8月中に地域の人に発表する予定だったのですが、コロナウイルスの緊急拡大のため発表が中止になってしまったのでまだお伝えできずにいます。
計画を作ってからがある意味本番だと思っており、「作っただけ」に終わらないように、今後その運用方法を考えていく必要があります。
さて、次回の記事が最後になります。
次回は2021年5月~7月に行った「実際のアクション」についてご紹介します。これらのアクションは、計画を作るのと同時並行で実施しました。根底には小さなことからでも行動を起こすことが次につながるという思いがありました。ご覧いただければ幸いです。
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